後日譚を評価して欲しいです

菊池寛さんの「形」の後日譚を学校の課題で書かせていただきました。
差し支えなければ、私の書いた後日譚を辛口で評価しては頂けないでしょうか。
本文:https://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/4306_19830.html
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後日譚
「形に沈む」

新兵衛の脾腹から鮮血が噴き、鎧直垂を腐鉄のような赤に染めた。
五畿内から中国地方まで名を轟かせた大豪の士は己が“形”の影に囚われ、地に沈んだ。

同じ時刻、猩々緋の羽織と唐冠纓金の兜を纏った若侍が、三間柄の大身の槍を携え、戦場を駆けた。
その時、若侍の姿を借りて、かつての覇者の残影がこの地を再び駆け抜けた。
その走る影に、ある者は武者震いし、ある者は息を呑んだ。

駆けながら、彼の胸奥に去来していたのは、己か影か、その境目すら曖昧な、熱と凍えだった。

彼は黒駒を駆り、敵兵を薙ぎ、突き、捌いた。
そのどれもが己の技でありながら、どこか既視のようだった。
誰かの“形”を、ただなぞっているような感覚。

若侍の猛進に、敵勢は見る間に崩れ、退いた。

敵を退けた若侍は、ふと周囲を見渡した。
二番槍として先駆けたはずの新兵衛の姿が、どこにもなかった。

「……新兵衛殿……」

返事はなかった。
ただ、空が高く、静かだった。

陣を見下ろす丘の上、ある老兵が呟いた。
「……いや、違う……あれは、生きた者の影ではない……」

勝鬨の上がる頃、若侍の槍先にあったのは、血ではなかった。
宿っていたのは、骨の髄を凍らすような虚しさだった。

かつて槍中村が纏っていた"形"の影だけがただ、そこに残っていた。

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