例えば、漁師がテーマだとしたら…
「……い!」
「おい、カロン! 起きろって!」
その声で、僕の意識はまどろみの底に沈んでいた状態からゆっくりと浮上する。
霞む視界をこすりながら目を開けると、船長のアノーラが、硬い髭を指で撫でながら嬉しそうに言った。
「外に出てみろ。ありゃあ、町の連中もみんな喜ぶぞ」
「本当ですか!?」
僕は、アノーラの表情から外で何かが起きていることを察し、勢いよく休憩室を飛び出した。
重たい扉を開けると、真っ暗な海を照らす照明の光が目に差し込む。
僕はそれを手で遮りながら、船の側面へと駆け寄り、身を乗り出すように海を覗き込んだ。
さっきまで沈んでいた網が、ゆっくりと引き上げられていく最中だった。
同時に、水面で跳ねる無数の魚たちが、まるで漁師たちを祝福するかのように、音を立ててはね回っている。
「よかった……」
その光景を目にした途端、さっきまでの眠気は吹き飛び、安堵のため息とともに肩の力が抜けた。
その肩に、アノーラのがっしりとした腕が巻き付いてくる。
「大漁だよ、大漁! めでてえなあ!」
上昇する網は、魚の重さで膨らんで空間を歪ませ、海水を滴らせながら光の中に浮かび上がっていく。
これは、長年原因不明の不漁に悩まされてきた漁師たちの気持ちを表すような巨大な芸術作品のようだ。
作品名をつけるなら、”感涙”がいいだろう。
みたいな感じです。
先程僕に添削してほしいとおっしゃいましたが、基本的にはわざわざ僕が直しをする必要がないくらいすばらしい作品になってると思います!
情景描写などもしっかり描けているのですが、もし一つ細かいことを言うならば、視覚のみならず五感を意識して景色を描いてみてほしい、ということです。
「重たい扉を開けると、真っ暗な海を照らす照明の光が目に差し込む。
僕はそれを手で遮りながら、船の側面へと駆け寄り、身を乗り出すように海を覗き込んだ。」の部分を例に取ってみます。
「重いドアノブからのギシギシという振動を右掌に感じつつ夜闇に一歩踏み込むと、先刻より幾分か湿っぽくなった潮の匂いが僕の鼻を突き刺した。強刺激的すぎる海の匂いと遮る手をも貫通するような鋭く痛い照明に半ば困惑しながらも、僕の視線は不思議な力に吸い込まれるようにして、うるさく暴れる波の方に注がれた。」
普段海を題材にしないからかリアリティに欠けており失敗感が否めませんが、原文より少しだけ表現の幅が広がったのがおわかりでしょうか。
僕のアドバイスが少しでも参考になれば幸いです。あ さんの今後より一層の創作活動に期待しています。
ありがとうございます。確かに描写で足りないと思ったら五感なかったですね。