洗脳の恐ろしさ

洗脳とは恐ろしいものだ。外見からは大丈夫そうでも、洗脳が抜け切れていない人はいる。俺はある哲学の教員の中年男性に煮湯を飲まされた。そいつを友人だと思っていたのに、裏切られた。当初は許せないという怒りが沸々と湧いてきたが、こいつが洗脳されていたと気づいた後、怒りもあるが憐れみも感じた。

この男は、かなり酷い洗脳を受けたそうだ。アメリカ南部の田舎で、キリスト教原理主義の家庭に育ったという。俺はあいにくそれがどんな場所か知らないが、進化論の否定や肉体が悪だと教わったみたいだ。そして未だに、その後遺症があるみたいだ。ここではいくつかあげる。

まず、時折酷い片頭痛に悩まされるそうだ。そうすると、日曜日に教会に来るのも出来なくなる。自分が書記を務めている教会なのに、だ。それで、教会に行かずに安静にするみたいだ。片頭痛は女性に多いが、男でも過度なストレスなどがあると起きる。こいつは未だに、子供時代の洗脳による慢性的なストレスを抱えているみたいだ。

そして、親に対してストックホルム症候群を抱えていた。ストックホルム症候群とは、犯罪や虐待の被害者が加害者に対して強い共感、親近感、さらには依存心を抱くようになる心理的現象だ。洗脳された宗教を忌み嫌う様な事を言う傍ら、その宗教に洗脳した親を感謝しているとよく分からない事を言っていた。明らかに葛藤を超えた、一種の共依存と認知の歪みがあった。

この認知の歪みが、最も怖いと思った。こいつが俺の行動にいちゃもんつけてきたから、何が悪かったのか聞いた。そしたら、そいつは〇〇がとても嫌だったと言った。俺は〇〇と聞いて、あれか、と見当はついた。だが、こいつの説明は、実際に起こった出来事とはかなりかけ離れており、感情に支配され、客観性がなかった。

普通なら、いつ頃、こんな事が起こった。それでこうだったと言った、概要、つまり他の人間も体験した事実から始まり、自分の感想に移る。だが、こいつは、いきなり自分の主観的な情動的記憶から入った。そして、この情動的記憶は、恐ろしく不正確だったのだ。全体の一部分だけを見つめ、その一部分も感情のせいで、全く正確に記憶できていなかった。教科書で行けば、数学の教科書で、ごく一部の数式を覚えているが、記号が何を示すのかは一才理解できておらず、見当違いの答えを出すと言った具合だ。

しかし、これも洗脳の後遺症だと思った。洗脳は幼少期から長く続くと、脳の構造までも変えてしまう。特に、扁桃体や海馬など、記憶を司る期間に悪影響を及ぼすのだ。結果として、記憶でも、感情から入り、理性を失い、感情に歪められて、かなり偏った記憶となる。彼は従来の嘘つきとはまた違う。嘘つきは罪悪感もなくペラペラ真っ赤な嘘をつく。一応こいつは、真っ赤な嘘はつかない。一応事実には基づいている。だが、認知の歪みのせいで、客観的な見方は全くできない様だった。

この様なケースは、高学歴や肩書きが立派でも、あまり珍しくないそうだ。奴は体は大人だが、精神的にはずいぶん幼かった。特に感情的になると、論理で飯を食っている人間だとは思えない。頑固で妥協を一切せず、こちらの話にも一切耳を傾けない。そして感情的に当たり散らし、挑発的な表現を使い、全く問題解決をしようとしない。そして、責任感や相互の尊重も全く見られなかった。つくづく、洗脳は恐ろしいと感じた。

お気に入りに入れる

この投稿にコメントする